スムーズな寝返りは寝具が決める

3D(3次元)CT画像を見てみると、背骨がきれいにS字の時はスムーズな寝返りができているリラックスした状態です。

反対に、ぎちない寝返りの寝具条件の仰臥位は、頭が高過ぎたり低過ぎたりするだけではなく、首~胸~腰までの姿勢がつまり過ぎたり伸び過ぎたりして、悪くなっているのがわかります。

つまり、至適睡眠姿勢を決定する最大の要因は寝具だとわかります。言い換えれば、寝具調節こそが、睡眠姿勢をよくも悪くも調節できるのです。

寝具の種類による比較してみました。①寝具のない時(板の間に寝た時)、②ウォーターベッドに寝た時、③枕の高さとコイルの硬さを身体各部に適合させて寝た時の睡眠姿勢です。

①は胸から腰が反張といって反り返り、②は重たい胸から腰が沈み、相対的に枕がなくても頭が持ち上っています。③は至適枕によって首から胸、腰までが最も動きやすい、、バランスを維持している状態です。

さらに、人間の姿勢調節の能力という観点から、興味深い姿勢を紹介します。

枕やベッドの調節をしない時の赤ちゃんと高齢者の睡眠姿勢を比較したものがあります。

側臥位において、O歳以下の赤ちゃんは何も寝具の調節をしなくても左右対称でバランスよく整います。

一方の高齢者は、首から骨盤までが不良に曲がっていて苦しそうなのがわかりました。

仰臥位では、赤ちゃんは枕を使用していないのに、仰臥位類椎傾斜角が15.3度と至適枕で調節したのに近い角度になります。高齢者は頭が下がりマイナスの角度になっています。

このことから、乳幼児の姿勢調節能力の素晴らしさを垣間見ることができました。反対に考えると、成長するにつれて、つまり加齢とともに、睡眠姿勢の調節が必ず必要になることがわかったのです。

 

寝具によって姿勢が変わる

あなたは毎晩の睡眠姿勢を決定する寝具をどこで購入していますか?

多くの人は、寝具店、家具店、量販店、デパートやスーパーなどで購入していることでしょう。

そして、こんなに大事な寝具を、あなたは何を基準にして選んでいますか。

店頭には、豊富な商品知識を持った販売員がいることもあれば、いないこともあります。しかも販売員は、寝具メーカーから提案されている商品の売り文句を述べているだけというケースもあり、そんな場面を目の当たりにすると悲しくなります。

お客様のニーズを理解して最適な商品を紹介してくれるケースは、残念ながらあまり多くありません。

これは、販売員が無知なのではなく、寝具選びの基準が確立していないことと、至適睡眠姿勢を具現化する寝具が精査されていないことが問題だと、私は考えています。

私たちは一人ひとり体格や身体的特徴が異なっています。それを規格内におさめようとすること自体、大きな疑問です。とくに睡眠姿勢を決定する割合が高い枕とベッド、マットレス、ふとんについては慎重に選びたいものです。

しかも、繰り返しますが、寝具は買ってきた状態で永久に使えるというものではありません。よい睡眠姿勢で寝たいと思うなら、自分の体に適合するように「寝具の高さや硬さを調節する」ことが重要なのです。

そのためには、自分に合った枕を使い、敷き物の硬さを変えて、自分の体に合わせて調節することも大事です。

さらに、容易に寝返りを行えるように、寝具による睡眠姿勢の調節方法も大切になります。

寝返りを含めた全身の睡眠姿勢を考えた寝具選びが大事になるのです。

 

寝返りには4段階と、3つのパターンがある

自由に動いているように見える寝返りですが、身体運動学的に見ると、寝返り動作には一連の流れがあり、上向きから横向きへ4つの段階に分けられます。

第1段階は、すべての動作に先駆けて頭を動かします。頭の動きによってその後の寝返りにおける体の使い方が変わります。

頭を前に倒す、すなわち首を曲げる姿勢をした場合は、体の前面の筋肉を使って寝返り動作を開始します。

頭を後ろに倒す、すなわち首を伸ばす姿勢をした場合は、体の後面の筋肉が活性化され、寝返りを開始します。

第2段階には、初動の部位によって分類される3つのパターンがあります。上肢パターンと下肢パターン、上下肢同期パターンです。

上肢パターンは、まず肩甲骨を前方に出します。肩甲骨は胸郭(肋骨に囲まれた胸)の上に乗っていますから、肩甲骨が動けば胸郭も回旋(回ること)できるのです。

下肢パターンは、まず膝を立て股関節を曲げます。その後、下肢を寝返り方向に倒して生じる力を利用して、重くて大きい骨盤を回転させます。

または、膝を立てて足裏で床面を蹴って回転することもあります。上下肢同期パターンは、上肢と下肢がほぼ同時に動き始めるパターンです。

第3段階は体軸の回旋で、主役は脊椎です。上肢パターンでは、胸椎を体軸として、周囲を囲む胸郭が床面に接触する部分の形を変形させながら、上手く回旋します。下肢パターンでは、腰椎を体軸として、周囲を囲む骨盤が床面に接触する部分を変形させながら回旋します。

上下肢同期パターンでは、胸腰椎を体軸として、まるで丸太のように寝返りします。この時重心の移動が行われています。

第4段階は、いよいよ寝返りの最終段階です。横向きの姿勢は、上向きの姿勢に比べて、ベッドやふとんに接する支持基底面が小さく不安定な姿勢です。

これを安定させるためには支持基底面を広くすればよく、膝と股関節を曲げて左右の足を少しずらして骨盤の安定性を確保し、静止に至るのです。

最も自由度が高く不安定なのは頭と肩です。そのために適切な高さの枕を使用し、頭彑肩を安定化させる必要があります。

 

自分の寝返りを観察する

私は、毎晩様々な睡眠環境を設定して眠り、終夜ビデオを撮影します。目的は寝返りの観察です。その結果は興味深い情報にあふれています。

最も興味深いのは、眠っているとは思えないほど巧みな動きをすることです。その行動を姿勢制御と呼びますが、筋骨格系と神経系の複雑な相互作用によって統合し引き起こされていると考えられます。

また一方で、寝返りは睡眠環境からの多くの制約を受けて阻害されますが、これと闘って寝返りするのには驚くべき行動力です。感動すべき自分の寝返りに遭遇した日のことは、今でも忘れられません。

夏場、敷き物をはいだコイルベッドに大の字(上向き)に寝ていました。最初に頭がぴくっと動き、手で顔をこすり、右腕を大きく前方に振り出すとともに右足を持ち上げ、右半身が空中に浮き、まるで体幹を焼き鳥の串のように中心軸にしてコロッと左に寝返りを打ったのです。

その一連の動きは計算された効率のよい動きに他なりません。ビデオを何度も何度も見直し、すごいすごいと一人でビデオの中の自分を褒めました。

冬の寒い日には、暖かい掛けぶとんを掛けて寝るのでなかなか寝返りの観察ができず、また掛けぶとんによっては寝返りを妨げるものも少なくありません。

そんな時は、夏と同じように頭がぴくっと動き、手で顔をこすった後は、右腕で邪魔な掛け物をよいしょと持ち上げ、自分がこれから打つ寝返りの方向に空間を確保してから、さらに右足で足元の掛けぶとんを蹴ってどかし、やっと寝返りを打つのです。まるで覚醒した脳で周囲の観察を
しながら運動をしているような巧みさです。